第五人格の話

POTAKAの一室で懸命にキーボードを叩くR君。

画面には暗澹たる樹海で異形のハンターから文字通り必死に逃げ回る人が映し出されている。

「何やってんの、DBD?」

「いいえ、第五人格ですよ」

暗い森で捕まったら八つ裂きにされるに違いないビジュアルの魑魅魍魎から逃げ回るゲームといえばDBD(デッドバイデイライト)だけだと思ってた私のアンテナ感度の低さに失笑気味なR君、今回は利用時間の一部を利用してよくこのゲームをプレイしている彼にその魅力を語ってもらうことにした。

「そもそも運営がクソなんですよね...問題もなにもそれに尽きますよ」

R君は本当にそれに尽きます、それだけです__と話を締めくくってしまった。

しかし、私はさらに掘り下げて聞いてみることにした。ツイッターの投稿ならいざ知らず、記念すべきブログ一回目の記事が昨今のライトノベルのタイトルより短いと折角のこの企画が一回で終わってしまう。それは流石に不本意だったからだ。

「そんな身も蓋もないないこと言わないでよ...少なくとも一記事分、2000文字相当は喋ってもらわないとこの企画自体が破綻しちゃうんだから。具体的にどうクソなの?」

私の懇願と質問に対し、不承不承といった感じだがR君は話を続けてくれた。

「先ず、というか徹頭徹尾ゲームバランスが悪いですね。ハンター(追手)とサバイバー(逃走者)のバランスが破滅的でそれに端を発して何個か問題がおきてるんですよ」

なるほど、ゲームバランス…そこに問題があるのは確かに運営側の落ち度に違いない。しかし、基本は追いかけっこという単純なゲーム性でどうしてバランスが悪くなるのだろうか、私は質問を続けた。

「有体に言えば追いかけっこだよね?単純なルールのゲームなのに、そんなにバランスが崩れることってあるの?」
「確かに基本は追いかけっこなんですが、実はそんなに単純ではないんですよ。例えば逃走に必要な解読という要素があって、これは逃走の過程なんですが、これを完了するか否かがハンターの追跡からサバイバーが生き延びるかどうかを決めるんです。つまり、サバイバー側は逃げ回りながら作業もこなさなくてはならない訳です」

「なるほど、確かに単純な追いかけっこではないね」

「その通りです。さらに言うと、サバイバーやハンターにもそれぞれ個別に能力が与えられています」

なるほど、ここでゲーム音痴の私にもわかってきた。

「その解読や能力のバランスが悪いってことか...具体的にはどう悪いのかな?」
「そうですね、まず解読のことから説明します。再度、このゲームのルールの説明に立ち返ることになるのですが、サバイバーが一定数逃亡するとサバイバー側の、逆にハンターが一定数のサバイバーを捕まえればハンターの、それぞれ勝利となります」

「つまり、この解読が簡単すぎても難しすぎてもバランスが崩れるってこと?」

「そうですね。そしてこのバランスが今現在の環境だと悪い、より具体的には解読が簡単すぎるんです」

「確かに、それではサバイバーに有利すぎるね」

解読というこのゲームにおけるバランスの根幹の現状があまり良くない状態であることに不服そうなR君、だが不満な点はそれだけではないようだ。

「ほかにも問題点はあります」

「解読以外の問題だね。それはどういうものだろう?」
「それはキャラクターごとの能力の差があまりに大きいということです」

「うーん...それは強いキャラと弱いキャラの差が激しいってことだよね?その問題ってどのゲームでも割とあるよね?」

「確かにそうですね、しかし重厚な世界観を持つこのゲームでは特に問題になるです」

私の記憶する限り、ゲームバランスの問題として、キャラ間の能力の差は度々問題になる。このゲームで特にというのはどうしてなのだろうか、私はさらにR君に質問を投げかけた。

「特にって言ったけど、ある意味でゲームにおける普遍的問題がこのゲームにおいて特に大きな問題になるのはどうしてだろう?」
「それはこのゲームの魅力に起因します」

R君は、このゲームの魅力、即ち強みが逆に弱みを倍増させる原因を作っていると言うのだ。

「本来のゲームの強みが逆に弱みを引き立ててしまっていると、こういうわけだ」

「はい。これについても例を挙げながら具体的にお話しします。このゲームに登場するサバイバーやハンターには一人一人ストーリーが設定されていて、サバイバーが無辜の被害者でハンターが極悪という訳ではないんですよ、顕著な例は弁護士と復讐者レオですね、弁護士が結構悪いことをしていて、その被害を被った悲劇の人がレオなんです」

「なるほど、追手にも逃走者にもそれぞれ追う理由と追われる理由が設定されいているってことか」

「そうです。つまり、プレイヤー毎に思い入れのあるキャラはいるわけでして、このゲームを単純なキャラクターの強弱だけという狭い視野で見てしまうと魅力が半減してしてしまうんです。でも、今回実装された新キャラは明らかに強すぎる環境破壊キャラで、みんなそれを使ってしまっている」

「なるほど、それは世界観が台無しだ...」

そして___R君は今回の会話中一等憮然とした顔を作ってさらに続けた。

「そして、これに関係して顕在化してしまった問題があるんです。それはプレイヤーの民度です」

「強いキャラクター使わないと怒られたり、罵倒されてしまうようなことがあるってこと」

「そうです。こうなってしまっては友達とプレイする以外に好きなキャラは使えないですし、そもそもオンラインに潜ろうと思えないんです。つまり、運営のまずさとプレイ

ヤーのまずさによってリアルでもゲーム内でも世界が広がらなくなってしまってるんです」f:id:potakahotaka:20210421143442j:plain

(第五人格について語るR君)

確かにこれは勿体ないことだ。折角の魅力的な世界観やゲームシステムも、こうした問題を打開しない限りは、その訴求力は半減してしまい、新規プレイヤーに対しても既存


プレイヤー対しても悪影響は避けられないだろう。

「運営がしっかりと暴言を使うようなプレイヤーにペナルティを与え、またゲームのバランス調整に関しても、全てとは言わないまでも多くのキャラクターが使うに値するような状態に調整してくれると、このゲームの強みが最大限に発揮されるようになると思います」

R君は以上のように締めくくった。彼の言う運営への失望はやはり愛故の者だろう。今回は運営への非難をさらに掘り下げて聞くことでR君の複雑な感情の本質に迫ることができた。なるほど、愛憎渦巻くとはこういったことを言うのだろう。

DBDよりもキャラクターがポップかつ基本無料のため門戸が広い第五人格、多くの魅力で老若男女問わず様々なユーザーを虜にしてきたこのサバイバルホラーゲームが今後も改善を経てその魅力を増していくことを願って止まない。